学究社グループユニオンニュース、1
2017.2.102016年12月15日付でそれまで社外取締役であった大久保治仁氏の「取締役兼副社長就任」の辞令が発令され、続いて17年1月1日には大久保氏の取締役兼執行役副社長の辞令が出ました。
これまでの5人からなる学究社の取締役会の構成は社内2名(河端・池田氏)、社外3名(大久保・澁谷・永谷氏)の構成でしたが、この構成がNo.2の地位に大久保氏が就くことに変わりました。
過去を振り返りながら今後のことを考える時、来年度に向けた人事の全体像はまだ見えないがこの人事は今までの体制が大きく変わることを予想させるものであります。
さらに、偶然同じタイミングになった小池都知事による「私立高校の学費の無料化」方針も今後国の教育改革の方針とともに大きな影響が出てくるでしょう。
また、「管理職=管理監督者」ではないのであって、このニュースの主な宛先である校長や室長の皆様が「自分は管理職である(からよくわからないけれど管理監督者だ)」から「労働組合」とは関係ない、と思っているのだとしたら、それは大きな間違いです。該当人数だけみても正社員の約半数が「管理監督者」にあたる会社などあり得ません。もし存在したらそれはblack企業としての存在と言えるでしょう。
2月6日に3月1日付けの人事に関する辞令が配信されました。 それにも関連しますが、このニュースでも触れているように学究社は今転機を迎えています。こうした状況の中人事異動等に伴い、例えば給与のdownや通勤の著しい困難等の不利益変更の問題があれば組合に相談して下さい!! |
2 これまでの概略
3 2016年第2回団交記録
4 16年第3回団交記録
1 学究社では今、何が問題か
(1) 現状につながる直接的な変化の兆し------新しい体制に備えよう
16年の秋の研修会では河端社長自らが引退をほのめかす状況になった。これはまさに近年の学究社の好業績を支えてきた都立中高受験を取り巻く状況がこのままでは限界を迎えようとしている中で、学究社が次の段階へ進むことへの経営者の意思表明に他ならない。何も準備していない中で「引退」などするはずはない。「引退をほのめかす状況」とは次の段階へ進む準備が出来たことの経営者なりの意思表示に他ならない。
それが形になって明らかにされたのが、冒頭にも触れた16年12月15日付の、それまで社外取締役であった大久保氏の「取締役兼副社長就任」の辞令である。(17年1月1日付の辞令では取締役兼執行役副社長になっている)
これまでの5人からなる学究社の取締役会の構成は社内2名(河端・池田氏)、社外3名(大久保・澁谷・永谷氏)であり、池田氏の立場は取締役兼専務執行役(以前は取締役兼副社長)であった。この構成がNo.2の地位に塾経験のない大久保氏が就くように変わるということは、新年度の人事や体制に大きな変化が起こる兆しであると思われる。
今年度の団交要求・団交に対する会社側の強硬な態度も、こうした新体制への移行措置の一つと考えれば納得がいく。邪魔者は必要ないのである。新体制への移行とは、言い方を変えれば「個人商店」から「普通の会社」への転換である。
買収・売却などの経営者の意志があると、従業員に対しては前兆としての人員整理などの動きがあるのは進学舎のときに経験している。今後はこうした状況が起こることも想定しながら従業員の雇用・生活を守る闘いが今まで以上に重要になってくる。従業員は経営者の資産形成のためにのみ存在している訳ではない。
(2) 会社の団交の軽視・無力化の動きの加速------16年度の団交で顕著に
団交で扱おうとした具体的課題のうち特に問題と考えるものは次の(3)・(4)で述べるが、16年度第3回団交以降は特に、会社は労働者にとって重要な問題を団交の議題にすることを実質的に大部分は拒否している。実際第3回団交に向けた団交要求書を最初に提出したのは10月25日である。しかし実質的に団交に応じないとする回答を出してきたため、弁護士との相談を含めて要求書を再提出して実現したのが第3回団交であった。しかし、冬期賞与の交渉には応じたもののその他の項目は、当初の要求書同様目に付くのは議題にすることすら応じようとしない態度だったことである。文句があるなら都労委でも裁判にでも行けば、とでも言わんばかりの態度である。こうした状況を許すということは、会社の方針にひたすら従って働きその結果としていやになったり心身を壊したら辞めれば?、ということを認めしまうことであり、影響は組合員に留まらない。労働は生活の糧を提供するものであるがそれだけで良い訳ではない。ましてや「学究社はenaを中心とする教育機関を運営する企業体です。生身の人間に対する教育を行う企業ゆえ、当社には利潤追求に優先する禁止規定が存在します。……」とホームページで謳っている会社である。
(3) 自然災害時の出勤の問題
「自然災害時の出勤の問題」は、従業員の出勤に関わる問題であり、「義務的団交事項」にあたる、というのが弁護士の見解である。またそれ以前に「教育機関」であることを標榜する会社が従業員には原則出社を求めながら、休講にしない、という会社の方針の下、生徒(父母)に塾への出欠の判断を任せる、というのは問題があると組合は考える。こうしたことを協議することを求めた団交要求に対して、「義務的団交事項に当たらないと考える」とし、協議にすら応じようとしない会社の姿勢は容認できない。
(4) ストレスチェックの導入と実施について------何が問題か
ストレスチェックについての団交での経緯は16年第2回団交・第3回団交の経緯に詳しいが、重要なことは以下のような点である。
1) ストレスチェックの導入に関しては厚労省から「実施マニュアル」(別冊付録に一部収録)が発行されており、そこには導入に際しての手順が詳しく書いてある。それに対して配布された学究社の「ストレスチェックの実施について」(H28.11.11付)は、その手順に則って行われているとは認めがたい。だから組合は2回の団交を通して説明・回答を求めたのである。
2) ストレスチェックはその内容上「個人情報」の塊であるということだけでなく、それが業務に密接に関連しているため、「事業者」は運用に際しては極めて慎重な取扱いが求められている。つまり「メンタル」不調をきたした労働者が安易に「退職」や「休職」に追い込まれないようにするためである。だからこそ1)で述べたように正しい手続きを踏み、運用されているかが重要なのである。問題等が発生しても間違っても会社の「ストレスチェックの実施について」にあるような人事部に電話するようなことは安易にしないようにしよう。
3) さらに学究社の「ストレスチェックの実施について」では就業規則の改定の実施についても一方的に表明している。就業規則の改定には組合や労働者代表の意見を聞くことが義務づけられているはずで、会社による一方的な改定など出来ないはずである。
以上述べたようなことが現在の重要課題である。組合が提起するのは下記のようなことである。
①新体制への移行に対する備え
②従業員への会社の方針の一方的な押しつけと、同時進行の組合に対する団交の無力化を中心とした組合つぶしに対する闘い そこで組合は
☆ 団交の追求-及び他の方策(都労委・労基署・裁判)の活用
☆ 組合による情宣の充実-ニュースの発行やホームページの充実と活用
☆ 労働相談 等の活動を提起するものである。
2 これまでの概略
これまでの学究社の動き
2008年の進学舎(進研社)の買収・子会社化を契機に、瀕死の状態であった学究社(2008年当時の株価300円程)は息を吹き返し、その後13年の吸収合併を経てJASDAQから東証二部上場、東証一部上場(株価約2600円→1株を2株に分割し、現在(17/2/6)は約1500円)へと急激に業績を伸ばしてきた。しかし学究社は「普通の会社」ではない。実質オーナー経営者である河端真一氏の「個人商店」とでも言えるような会社として発展してきた。しかし65歳になる河端氏はそこから身を引こうとしている、あるいは身を引くことになっても大丈夫と言える準備が出来ている、という段階に来ているのであろう。 13年からの持ち株の変化を見てみよう。
13年、ケイエスケイケイ(株) 39.93% 河端氏 31.51% (学究社の自社株98万株を除く)、14年、KSKK 43.01% 河端氏 26.15% (自社株140万株)、15年、KSKK 43.06% 河端氏 15.35% (自社株 140万株)、16年(株の分割後)、KSKK 33.45%(358万株) 河端氏 2.99%(自社株 104株)。ケイエスケイケイ(株)の株主は2人で河端氏は株式の92%を保有しているので[実質河端家の資産管理会社]と言えるような存在である。この変化が何を物語るかは我々には正確には分からないが、16年に構成が大きく変わってきていることは見て取れる。また、河端氏は個人としても持ち株数を考えると、これまでの少なくとも数年間は配当だけでも毎年1~2億円前後を受け取ってきた。内訳は別として、全体として学究社がこれまで発展してきたことは分かる。
それを可能にしたもの
こうした状況を可能にしたのは、1)(合格実績で学究社を救い、都内進出の足がかりともなった)進学舎の買収、2)全国的には急速に進行している少子高齢化が首都圏では進行が遅い、という現実のもと、特に東京都では地方における急速な人口減少にもかかわらずこれまでは(特に若年層の)人口は全国で唯一増えていて、それが、受験年齢層の減少を抑えてきた。3)また受験業界では敗北寸前だった学究社は「都立中高一貫校」「都立進学重点高」というニッチな市場に特化することによって生き延びたのである。これはまた政治・社会の状況のも支えられてきたものである。すなわち受験を支えてきた親と祖父母の層が、90年代以降の経済の停滞と年金制度のセイフティネットとしての役割の低下により、子や孫の受験を支えるのが困難になってくる中で、「公立の進学校(学費はほぼ実質無料)」の存在が一定の魅力を提供したこと。4)1970年頃までの都立高の栄光の時代がどん底の時代へと変化してきた中で、この10年程は逆に経済的な背景もあり、総体としての都立高の大学入試の実績も上昇してきたのである。しかし「公立」といえども受検(受験)は存在するのであり、塾に行かないで入学するのは困難であったことも相まって塾に対する一定の需要があり、こうした状況の中で学究社は「都立ならena」を掲げて低迷を脱し発展してきたのである。
今後はどうか
1) だがブランド価値のある「都立中高一貫校」「都立進学重点高」の定員が増えない中で、SAPIXなどの私立対応型の塾も区内中心に都立を併願校に取り入れる戦略も強化している。したがって区内へ多校舎展開しても合格実績はそれほど伸ばせず、採算性の低下を招く要因になってきている。また多摩地区などは新校舎を出しても内部での生徒の取り合いの状況にもなっている。
2) 現在国によって21年導入予定の大学入試改革を一つの頂点とする学習指導要領の改定も含む教育改革が進行中である。内容は多少乱暴に言えば今都立中・高一貫校が目指しているようなことを指導要領を通して大学を含めて全学校に広げることであり、それを先取り実施している都立中高一貫校を勧めるenaの方針が正しいようにも見えるが、それは誤りである。さらに最近明らかになった小池都知事の次年度予算の「私立高校の学費の無料化」の方針を考えるとなおさらである。国の方針のもと、私立も同じような教育課程になったら私立に対する(学費の)経済的優位性が低下した都立には何が残るのか? 一部の実績を出している学校を除けば、都立の優位性が低下することを意味する。入試は入学前の選抜であり、(私立中高の)入学試験が直ちに入学後の教育課程と連動して変わる必要性があるか、連動するとしてもいつそうなるかは今は分からない。すると受験する側の現時点での最善の塾の選択は都立入試にも対応できる塾を選択することであり、(enaのような)都立入試にしか対応できない塾を選択することではないであろう。
今後の学究社の動きを考える上で考慮すべきこと
2008~13年にかけての労使関係とその後(1)
2008~13年にかけての労使関係とは、進学舎の買収・子会社化→吸収合併の中で生じた特に進学舎内部で生じた労使の摩擦に起因するものである。当初は池田社長体制のもとかなり強引な経営方針も影響したであろう社員の大量退職や独立の動き。12年頃から顕著になった合併の動きと同時並行で進んだ諸問題。そうした中で会社のあまりに強引なやり方に対して組合は都労委への救済申立てを行った。特に12年の後半からは諸問題の解決を目指した団交要求等に対しても会社側の弁護士の存在が見え隠れしてくる。この時期以降の団交要求等に対する会社側の回答・対応には、都労委や裁判(齋藤前委員長が起こした雇用を巡る労働審判・民事裁判)でも会社側代理人となったY弁護士の意向(=経営者の意向)が反映している。これは16年の団交の対応にも強く出ている。
2008~13年にかけての労使関係とその後(2)
「採点センターの設置」や「模試の勤務時間内の実施」等も「模試の採点を50円/枚で専任に押しつけ、時間外・休日労働の支払いをケチる会社の方針に組合が団交で問題にした」こと、「地区を減らし=地区長を減らし」・「副地区長を廃止」(替わりに「ブロック長」なるものを置いたが)したのも「都労委での闘い=地区長は管理監督者ではないと組合は主張」が契機になっている。(以下の16年第2回団交記録参照)
3 16年(度)第2回団交
16年7月7日に第2回団交が開かれた。要求書の内容は以下の通り
1 夏期賞与について
・夏期賞与については 2.8ヶ月 を要求する。
根拠:平成28年3月期決算において「売り上げ」「利益」等好調であり、株主配当も前年度(50円/株)を上回る60円/株 を公表している。当然ながら従業員にもそれ相応の待遇を還元すべきである。
・会社側回答
「年俸制の契約更新のこともあり、夏期賞与の評価期間には平成28年4月~5月の実績も含むが、この新年度の実績が悪いので本来ならば昨年並み(2.3ヶ月)は出せる状況ではないが、皆さんの努力を評価し、今年度は夏期講習での挽回を期待して昨年並みの2.3ヶ月を回答する。」
・組合側の反論
新年度の実績が悪いのには授業料を下げたことの影響があるのではないか、授業料を下げることなどは経営者の判断であり、実績が悪いというのは経営側の判断が間違っていたのではないか、と主張。
それに対して会社側は「校舎間にばらつきがあり、頑張っている校舎もあるのだから、それは経営責任ということではない」、と主張。
組合は個々のばらつきがあろうが全体として業績が悪いのだから基本的には経営責任の問題であり、前述のような会社の主張を認めたら、どんな状況でも結局は経営責任の問題が浮上することはなく個々の従業員の責任になってしまうのではないか、それは筋が違うと反論。団交の場ではこれ以上の議論の進展はなく、団交後の執行委員会での協議の上
会社側回答 2.3ヶ月 を受け入れた。(7月11日)
2 ストレスチェックテストの導入について
前回(第1回団交)の団交において会社はストレスチェックテストの導入体制については、現状検討していない(3/23現在)と回答したが、それに関連して以下の質問に対する回答を求める。
1) 現状(ストレスチェック導入以前)でも「衛生委員会」の設置は安衛法に基づいて設置が義務づけられているが、設置されているのかどうか。
2) 衛生委員会の活動は社内に周知徹底することが求められているが、正しく運営されているのか。
少なくとも我々は「衛生委員会」の設置・運用実態について知らされたことはないので、「衛生委員会」が法に則り設置・運用されていることには疑義を持っている。
3) 安衛法の改正に伴いストレッチチェック制度の導入・及び本年11月末までのチェックテストの実施が義務づけられたが、それに関連して以下の質問に対する回答を求める。
① 事業者による方針の表明 は行われているのか。
② 衛生委員会の設置と調査審議 は行われているのか。
③ 労働者に説明・情報提供
以上テスト実施前の準備は行われているのか。
*以上が団交要求の「2」であるが、簡単に法的な状況を説明しておくと、
※労働安全衛生法=安衛法とは労働者の安全と衛生に関して定められた法令であり、職種により「安全委員会」「衛生委員会」の設置(学究社の職種では「衛生委員会」のみ)や「産業医」の指定が義務付けられている。
※労働安全衛生法は改正が行われ、今年(2016年)11月30日までに「ストレスチェックテスト」の導入・実施が決まっている。改正の主な内容は「メンタル」ケアに関することで、団交要求書にある①~③が実施前の準備である。ただし設置義務があるのは現状では50人以上の事業所である。
1)~3)に対する会社側回答。
現状では本部が「新美」と「新ゼミ」が一体化したためぎりぎり50人前後になり、本部では2年ほど前に「衛生委員会」を設置し、「産業医」も置いている、ただし校舎は1事業所にあたるので設置していないし、今後(法改正後)も置く予定は無いし本部の組織との連携を考えてはいない、と回答。
*組合の考え
法改正の中心は「メンタルヘルス」ケアを目指す「ストレッチチェックテスト」の実施の法による義務化にある。確かに法では当面義務があるとされるのは50人以上の事業所であり、それ以下は当面はいわば努力目標とされているのであるが、実際「メンタルヘルス」ケアの重要性があるのはむしろ校舎(法的には事業所)であると考えている。具体的な数値目標や授業・親との対応等はほとんどが校舎に課せられているのであり、離職者もほとんどが校舎所属の人間である。離職者の全てがメンタルが原因というわけではないが、問題発生場所は校舎であろう。従って「本部」のみ実施にどれだけの意味があるのか。
組合としては①校舎でのメンタルヘルスケアの充実、該当者が出た場合の適切な対応を会社は図るべきと考える。②校舎でメンタルヘルスの必要性が出た場合に本部では管轄する部署がない、というのは問題であると考える。③問題を感じている場合は是非組合に意見を寄せ、相談してほしい。
会社は「違法」ではないからやる必要がないではなく、もっと積極的に従業員の健康の増進を図る必要がある。健康にまで影響が出るというのはよほどのことである。
3 都労委の和解協定書にもある通り以下の組合員の範囲についての協議を要求する。
・管理監督者の範囲について会社の考えは「都労委での和解案(H26.10.10付)」の通り(校長・副部長以上)であると第1回団交では回答しているが、組合は認めない。
第2回団交における会社側回答も前回(第1回団交)と同じく「校長・副部長以上」を組合員の範囲に含めない(利益代表者)、という回答だが、「組合との合意が無い限り一方的に考えを適用することは無いし、そのように運用しているわけでは無い」とも回答。
しかしこれらは都合の良いところだけを取り出しての回答である。会社側が提出した「都労委での和解案(H26.10.10付)」は「地区長が管理監督者に当たるかどうか」を問題にしている時に、「校長・副部長以上」を持ち出すという「和解」の精神とは正反対の会社側の「一方的な和解の申し入れ」にすぎないものであり、「平井氏の陳述書(H27.9.14付)」の3ページでは「地区長と異なり、校長・室長は労働基準法の管理監督者としては扱っておらず、時間外手当ても支給しています。」と陳述しているのである。
都労委の和解協定書(H27.12.2付)は「1 組合と会社とは、組合から組合員の範囲を議題とする団体交渉の申入れがあった場合、交渉を誠実に実施することを相互に確認する。2 組合は、本協定書締結後、本件申立てを速やかに取り下げる。」という内容である。
*以上が団交要求の「3」であるが、以下簡単に法的な状況を説明しておくと
※労働基準法で定められている「管理監督者」の問題。
管理監督者の用件
①会社の経営と一体化したような権限を有すること。
②出退勤の自由。
③他の従業員よりも(管理監督者には「深夜労働」を除いて残業代は支払われないこともあり)待遇面で優遇されていること。
会社の主張によれば学究社においては「ブロック長」以上は管理監督者として扱われているが、組合は地区長も含め上記の用件を満たしているとは考えていない。(学究社権限規程・権限表等参照)
※労働組合法で定められている「労働者」の問題。
簡単に言えば「労組法」上の「労働者」には(使用人兼務役員)も含まれる。つまり労働組合を結成できる。
ただし、制限がある。(法適合組合と法適合組合で無い場合の制限は、「不当労働行為の救済手続き、法人格の取得、労働委員の推薦などの手続きに参与するため」には一定の資格要件、労働委員会の認定手続き等の制限があるが、これらの権利を行使する必要が無ければ組合員の範囲は全く自由。)
①「使用者の利益代表者(上級管理職)」と一般労働者の混合組合は、法適組合になれない→労組法上の特権的権限行使が出来ない。
1)役員、2)人事に関して直接の権限をもつ監督的地位にある労働者、3)労働関係の計画・方針に関する機密事項に接する監督的地位にあたるためにその職責が組合員としての誠意と責任とに直接抵触する労働者、4)その他使用者の利益を代表する者。を含む組合。
②混じっていると法適合組合と認められない恐れのある「管理職(上級管理職)」
1)使用人兼務役員を含む役員。2)人事を直接左右する決定権を行使できる者。3)労働条件や雇用制度の改変に直接携わり、その機密に接していることから組合員との板ばさみになる者。4)その他使用者の利益を代表する者。
③混じっていることが問題視されない「管理職(下級管理職)」
1)総務・労務・人事部門以外の課長(一般的な会社の呼称)の者。2)人事に関して補助的・助言的な地位にとどまる者。3)人事を直接左右する決定権といってもアルバイトといった補助的・臨時的な職務に関する人事は含まれない。等。
4 16年(度)第3回団交
16年12月9日に第3回団交が開かれた。要求書の内容は以下の通りだが、これは最初に提出した団交要求を実質拒否するような内容だったため改めて作成して提出したものである。
1.採点業務に関して
今後、特訓会場に採点を依頼する場合、勤務時間内に終了しない場合の処理方法を明確に各会場に指示せよ。
*これは16年夏期講習のテストの採点業務に関して発生した混乱について今後は同様なことを避けるため。
・会社側回答
特訓会場で、具体的に貴組合員のどのような労働条件に影響したのかを、明らかにしてください。明確になった後検討します。
問題点
先の前回の要求書に対する回答も含めて
(1)組合員の名前を明かすこと。
(2)その上で結果的に具体的に影響があった場合にのみ検討してもよい。(事前には話しには応じないが後で影響が出たら検討してもいい、と言っているのである)
として団交の用件のハードルを上げ、団交を回避しようとする姿勢が顕著であること。
2.大雨等の自然災害の出勤について
① 通常の出勤方法では出勤が困難なため、他の方法で出勤した場合(通常の通勤経路以外の経路やバスやタクシーの利用等)その費用を会社は負担せよ。
② 前日に校舎近隣に宿泊した場合その費用を負担せよ。
・会社側回答
この問題は、貴組合と協議して決定すべき義務的団交事項にあたらないと考えます。
問題点
直接的には16年夏期講習の際に台風接近で大雨警報が出されるような状況の中で「休講」等の案内を出さずに、
(1)社員には原則出社の指示は出したが処理について指示があいまいだったこと。
(2)来校するかしないかの判断を「家庭」に任せたこと。
という対応を会社が取ったことに疑問に感じたので協議を要求したものであるが、それに対して会社が「義務的団交事項」に当たらない」として協議を拒否したのは問題だということである。そもそも民間の会社であるとはいえ「教育」を売り物にしている組織が、生徒の安全に係わる重要なことをご家庭の判断に任せるという行為には問題がある、と組合は考える。組合の主張は「義務的団交事項に当たらない」と決めつけ、要は「経営判断に係わることだから組合が口を出すような事項ではない。」という対応を会社が取っているのが問題だと組合は主張しているわけである。組合は(弁護士の見解も踏まえて)従業員の出勤に係わることで「義務的団交事項」に当然当たると考えているが、対組合とか言う前に、会社は「教育」を売りにしている立場としての「社会的責任」を果たしていない、というのが組合の考えである。
3.冬期賞与の要求に関して
今年の冬期の賞与を下記の通り要求する。
平均 2.8ヶ月
・会社側回答
「16年の第三四半期」の数字が昨年度比較して悪いことを理由に
平均 2.2ヶ月 の回答(昨年度は2.3ヶ月) 最後はこれは受け入れた。
問題点
(1)業績が悪いことに関しては第2回団交でも「授業料の大幅下げ」等の影響が大きいのではないかと組合は主張したが、会社側の回答は前回同様良い校舎もあるのだから経営責任はない、の一点張り。しかもまだ「決算」は出ていないので「予測」ではあるが「株主配当」だけはちゃっかり「60円/株」の大判振る舞いはそのままだ。こうした状況は「グローバリゼーション」のなかで経営者はせっせと自分の利益の追求を優先させ結果として「格差拡大」の方向に進んでいる、という点。
(2)従業員はその中で「Only a pawn in their game. pawn=チェスの『歩』」の役割にしか過ぎない存在であること。一生懸命働く存在、体を壊し・精神を病んで辞めていこうが「彼ら」にとっては「歩」でしかない存在である。
塾のホームページの「ena」と会社のホームページである「学究社」のどちらを見るかでも見える世界は違う。「学究社」のホームページの「代表者挨拶」で「理念」を語っている河端氏、しかし4つ右の「ir情報」を開けば別な情報も見えてくる。優良な会社の業績。
the executioner’s face is always well hidden 死刑執行人の顔はいつも上手に隠されている。
4.有期雇用の社員の処遇に関して
① 有期雇用の社員(窓口のパート労働者や時間講師)の賃上げに関し、最低賃金の全国平均のUP率(3.1%)に見合った賃上げ、正社員の賃上げに相応する時給UPを要求する。
② 有期雇用者の雇用を原則継続せよ。
・会社側回答
組合に該当者がいれば交渉に応じるが、一般的課題として交渉に応じる考えはない。
問題点
こうした主張は確かに「違法」とまでは言えないかもしれないが、他の項目でも見られるように全体としてみると、組合を軽視・敵視し、団交を形骸化し、実施しないように持っていくことによって労働組合を無力化していく方針だと言える。
大企業や官公労を中心にした「連合」が今や原発再稼働を容認し、「官製春闘」に乗っかるような状況の中で、今日的な課題である「有期雇用」「過労死」「ブラック企業」「サービス残業」などの問題に組織として取り組んでいるのはその多くが「ユニオン」などの個人加盟の労働組合である。声を上げ闘っていかなくては社会を変えることは出来ない。
5.ストレスチェック実施に関して
1) 本年度第2回団交において
会社は、本部については導入するが、校舎では実施のつもりはない、としたことを確認せよ。
2) 11月10日に突然「ストレスチェック実施について」等が配信された。
(1) 「ストレスチェック実施について」は事業者(社長)の「方針の表明」か。
(2) 「ストレスチェック受検ガイド」は衛生委員会での調査審議の結果として出されたものか。
3) 以下について組合と協議せよ。
就業規則の改定や外部委託等を一方的に表明しているが、あらためてそれに関する組合との協議を要求する。
・会社側回答
実施は法に従って行っただけであり、組合と協議して決定することは考えていない。
問題点
16年第2回団交の経緯に詳しいが、第2回団交の場では少なくとも全社的に実施することは考えていない、と回答していたものが「16年12月の法施行」の直前に11月11日付けの「ストレスチェックの実施について」と「ストレスチェック受検ガイド」なる文書によって、正社員全員を対象として実施する、ということが突然伝えられた。この方針転換・進行している事態に対して組合が説明を求めるのは当然のことである。しかも会社側は第2回団交では少なくとも話し合いには応じていたにもかかわらず、第3回団交では要求書の段階から「実施は法に従って行っただけであり、組合と協議して決定することは考えていない。」として議題として取り上げることすら拒否してきた。会社は意図的に組合の要求をねじ曲げた上で拒否してきたとしか思えない。第1回団交での我々の「ストレスチェック」についての質問に対して「導入予定がない」としていたものが、第2回団交では「一部導入している」に変わり、さらにその第2回団交での会社の方針・説明がなぜ突然直前になって変更され、ストレスチェックが実施されることになったのか、等について納得のいく説明を求めるのは当然のことである。
次号予定 |
■ その他の情報はホームページをご覧下さい。「学究社ユニオン」・「東大職連/ユニオンイースト」で検索してみて下さい。
■ メールアドレスは「gakkyuusha.union@gmail.com」です。
■ 組合費等は以下の通り
組合費 正社員 月額3000円
時間講師・事務パート 月額500円 (但し手間を減らすため)半年分3000円
振込先 三菱東京UFJ銀行 国立支店 0005-243-1585923
トウキョウロウソシンガクシャ
連絡先 本郷事務センター 03-3830-9966
FAX:03-3461-6280
携帯 090-9344-5749 携帯メール:posi4th@ezweb.ne.jp4
付録1 |
今回のニュースで扱った団交に関連した事項に関する3点について都労委の申し立てを担当した旬報法律事務所宮里弁護士の見解を紹介いたします。いずれも会社側は「義務的団交事項」に当たらない等の理由をつけて実質的に団交で交渉の対象とすることを拒否してきた事項です。
ポイント解説 自然災害時の出勤について 自然災害時に出勤した場合の費用等を議題とする団体交渉について、会社は「義務的団交事項」 にあたらないと回答しましたが、これは労働組合法を理解していないといわざるを得ません。まず、 「義務的団交事項」とは、「団体交渉を申し入れた労働組合の組合員の労働条件その他の待遇、また は労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項」を意味します。そして、自然災害時に 出勤した場合の費用を会社が負担するか否かは、まさに「労働条件その他の待遇」に該当します。「 義務的団交事項」にあたらないはずがないのです。 採点業務について 会社は、勤務時間内に終了しない場合の採点業務の処理方法についても、「具体的にどのような労 働条件に影響したのかを明らかにしてください」との回答をしています。これも、団体交渉の趣旨・ 目的を誤って認識しているものでしょう。団体交渉は、労働条件の向上のため、労働組合に会社と話 し合いの権利を与えるものです。そして、話し合いの中で、労使双方の言い分を聞きながら、労働条 件について合意を形成していく過程なのです。そして、勤務時間内に採点業務が終了しない場合、当 然に残業をさせるのか、それともその他の労働時間や複数の労働者での分担とするのか、その処理方 法によって業務内容は変わってきます。 そうすると、労働者としては、勤務時間内に終了しない場合の採点業務の処理方法については、事 前に会社と話し合いをして、処理方法を決めておかなければなりません。事後にどのような影響が生 じたか否かは団体交渉の議題となるか否かとは全く別問題なのです。 ストレスチェックについて 会社はストレスチェックについても、「組合と協議して決定することとは考えていない」との回答 をしていますが、これも誤りです。先ほど述べたとおり、ストレスチェックをするか否かも、まさに 「労働条件その他の待遇」であり、「義務的団交事項」に該当します。会社がこのことについて団交 を拒否することは許されないのです。 |
付録2(一部収録) |
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
平成27年5月
改訂 平成28年4月
厚生労働省労働基準局安全衛生部
労働衛生課産業保健支援室
1 ストレスチェック制度の趣旨・目的
ストレスチェック制度の趣旨・目的
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)が主な目的です
近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5割を超える状況にある中、事業場において、より積極的に心の健康の保持増進を図るため、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日付け健康保持増進のための指針公示第3号。以下「メンタルヘルス指針」といいます。)を公表し、事業場におけるメンタルヘルスケアの実施を促進してきたところです。しかし、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成18年度以降も増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となっています。
こうした背景を踏まえ、平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)においては、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」といいます。)及びその結果に基づく面接指導の実施等を内容としたストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10に係る事業場における一連の取組全体を指します)が新たに創設されました。
この制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)を主な目的としたものです。
2 ストレスチェック制度の基本的な考え方
○ ストレスチェック制度の基本的な考え方 事業場における事業者による労働者のメンタルヘルスケアは、取組の段階ごとに、労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する「三次予防」に分けられる。 新たに創設されたストレスチェック制度は、これらの取組のうち、特にメンタルヘルス不調の未然防止の段階である一次予防を強化するため、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求めるものである。さらにその中で、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としている。 事業者は、メンタルヘルス指針に基づき各事業場の実態に即して実施される二次予防及び三次予防も含めた労働者のメンタルヘルスケアの総合的な取組の中に本制度を位置付け、メンタルヘルスケアに関する取組方針の決定、計画の作成、計画に基づく取組の実施、取組結果の評価及び評価結果に基づく改善の一連の取組を継続的かつ計画的に進めることが望ましい。 また、事業者は、ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止だけでなく、従業員のストレス状況の改善及び働きやすい職場の実現を通じて生産性の向上にもつながるものであることに留意し、事業経営の一環として、積極的に本制度の活用を進めていくことが望ましい。 (ストレスチェック指針より抜粋) |
3 ストレスチェック制度の実施に当たっての留意事項
○ ストレスチェック制度の実施に当たっての留意事項 ストレスチェック制度を円滑に実施するためには、事業者、労働者及び産業保健スタッフ等の関係者が、次に掲げる事項を含め、制度の趣旨を正しく理解した上で、本指針に定める内容を踏まえ、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)の場を活用し、互いに協力・連携しつつ、ストレスチェック制度をより効果的なものにするよう努力していくことが重要である。 ① ストレスチェックに関して、労働者に対して受検を義務付ける規定が置かれていないのは、メンタルヘルス不調で治療中のため受検の負担が大きい等の特別の理由がある労働者にまで受検を強要する必要はないためであり、本制度を効果的なものとするためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましい。 ② 面接指導は、ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、医師が面接を行い、ストレスその他の心身の状況及び勤務の状況等を確認することにより、当該労働者のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて、事業者による適切な措置につなげるためのものである。このため、面接指導を受ける必要があると認められた労働者は、できるだけ申出を行い、医師による面接指導を受けることが望ましい。 ③ ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析及びその結果を踏まえた必要な措置は、規則第 52条の14の規定に基づく努力義務であるが、事業者は、職場環境におけるストレスの有無及びその原因を把握し、必要に応じて、職場環境の改善を行うことの重要性に留意し、できるだけ実施することが望ましい。 (ストレスチェック指針より抜粋) |
<解説>
実施に当たっては、産業保健スタッフは以下の点に特に留意して取り組むことが求められます。
1 安心して受検してもらう環境づくりに努めること。
ストレスチェックの結果は労働者の同意がなければ事業者に提供してはならないことや、検査の実施の事務に従事した者の守秘義務が規定されているといった労働者のプライバシーへの配慮を求めた法律の趣旨を踏まえる必要があります。
また、ストレスチェックは、自記式の調査票を用いて行うため、労働者が自身の状況をありのままに答えることのできる環境を整えることが重要です。安心して答えられる環境にないと、労働者によって回答が操作され、労働者や職場の状況を正しく反映しない結果となるおそれがあることに留意しなければなりません。
2 検査を受ける受検者以外の方にも配慮すること。
例えば、ストレスチェックを受けた労働者の所属部署の責任者にとっては、そのストレスチェック結果は責任者としての人事労務管理・健康管理能力の評価指標として用いられる可能性があるため、そうした責任者に不利益が生じるおそれにも配慮する必要があります。
3 安心して面接指導を申し出られる環境づくりに努めること
面接指導の申出がしやすい環境を整えないと、高ストレスの状況にある労働者がそのまま放置されるおそれがありますので、労働者が安心して医師の面接を希望する旨申し出られるように配慮する必要があります。
4 ストレスチェック制度に基づく取組の手順
✔ ストレスチェック制度の実施責任主体は事業者であり、事業者は制度の導入方針を決定・表明します。
○ ストレスチェック制度の手順 ストレスチェック制度に基づく取組は、次に掲げる手順で実施するものとする。 ア 基本方針の表明 事業者は、法、規則及び本指針に基づき、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明する。 イ ストレスチェック及び面接指導 ① 衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規程として定める。 ② 事業者は、労働者に対して、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士(以下「医師等」という。)によるストレスチェックを行う。 ③ 事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対して、当該ストレスチェックを実施した医師等(以下「実施者」という。)から、その結果を直接本人に通知させる。 ④ ストレスチェック結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者から申出があった場合は、事業者は、当該労働者に対して、医師による面接指導を実施する。 ⑤ 事業者は、面接指導を実施した医師から、就業上の措置に関する意見を聴取する。 ⑥ 事業者は、医師の意見を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。 ウ 集団ごとの集計・分析 ① 事業者は、実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させる。 ② 事業者は、集団ごとの集計・分析の結果を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。 (ストレスチェック指針より抜粋) |
<解説>
○ ストレスチェック制度の実施に先立って、労働者への通知ならびにストレスチェック制度の実施体制の確立が重要な課題です。事業者は、ストレスチェックを円滑に実施する体制の整備並びに個人情報保護等をも含めた対応について労働者へ十分な説明をする必要があります。その際、事業者がストレスチェック導入についての方針等について事業場内で表明することが必要です。事業者の表明に続いて、衛生委員会の審議や体制の整備、個人情報保護などの対応が検討され、円滑な実施に向けてスタートすることになります。安全衛生(健康)計画や新年度に向けての経営陣の経営方針と同時に発表することが効果的といえます。事業場においては年度毎に安全衛生(健康)方針を定めて周知しているところもあることから、その安全衛生(健康)方針の中にストレスチェック制度の内容等を含めて周知することも一つの方法です。
5 衛生委員会等における調査審議
✔ 事業者は、ストレスチェックの実施前に、事業場の衛生委員会等で実施体制、実施方法等を審議・決定し、社内規程を定めます。
✔ 事業者は、ストレスチェックの実施の趣旨・社内規程を労働者に周知します。
✔ ストレスチェック実施後には、実施状況やそれを踏まえた実施方法の改善等について調査審議し、次回の実施に活かします。
(衛生委員会) 第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。 ① 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。 ② 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。 ③ 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。 ④ 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 (法より抜粋) |
(衛生委員会の付議事項) 第22条 法第18条第1項第4号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。 ⑩ 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。 (規則より抜粋) |
(1)衛生委員会等における調査審議の意義 ストレスチェック制度を円滑に実施するためには、事業者、労働者、産業保健スタッフ等の関係者が、制度の趣旨を正しく理解した上で、本指針に定める内容を踏まえ、互いに協力・連携しつつ、事業場の実態に即した取組を行っていくことが重要である。このためにも、事業者は、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明した上で、事業の実施を統括管理する者、労働者、産業医及び衛生管理者等で構成される衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法及び実施状況並びにそれを踏まえた実施方法の改善等について調査審議を行わせることが必要である。 (2)衛生委員会等において調査審議すべき事項 規則第22条において、衛生委員会等の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が規定されており、当該事項の調査審議に当たっては、ストレスチェック制度に関し、次に掲げる事項を含めるものとする。また、事業者は、当該調査審議の結果を踏まえ、法令に則った上で、当該事業場におけるストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、これをあらかじめ労働者に対して周知するものとする。 ① ストレスチェック制度の目的に係る周知方法 ・ ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気付き及びその対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的としており、メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないという趣旨を事業場内で周知する方法。 ② ストレスチェック制度の実施体制 ・ ストレスチェックの実施者及びその他の実施事務従事者の選任等ストレスチェック制度の実施体制。実施者が複数いる場合は、共同実施者及び実施代表者を明示すること。この場合において、当該事業場の産業医等が実施者に含まれるときは、当該産業医等を実施代表者とすることが望ましい。なお、外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合は、当該委託契約の中で委託先の実施者、共同実施者及び実施代表者並びにその他の実施事務従事者を明示させること(結果の集計業務等の補助的な業務のみを外部機関に委託する場合にあっては、当該委託契約の中で委託先の実施事務従事者を明示させること)。 ③ ストレスチェック制度の実施方法 ・ ストレスチェックに使用する調査票及びその媒体。 ・ 調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び面接指導の対象とする高ストレス者を選定する基準。 ・ ストレスチェックの実施頻度、実施時期及び対象者。 ・ 面接指導の申出の方法。 ・ 面接指導の実施場所等の実施方法。 ④ ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法 ・ 集団ごとの集計・分析の手法。 ・ 集団ごとの集計・分析の対象とする集団の規模。 ⑤ ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い ・ 事業者による労働者のストレスチェックの受検の有無の把握方法。 ・ ストレスチェックの受検の勧奨の方法。 ⑥ ストレスチェック結果の記録の保存方法 ・ ストレスチェック結果の記録を保存する実施事務従事者の選任。 ・ ストレスチェック結果の記録の保存場所及び保存期間。 ・ 実施者及びその他の実施事務従事者以外の者によりストレスチェック結果が閲覧されないためのセキュリティの確保等の情報管理の方法。 ⑦ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法 ・ ストレスチェック結果の本人への通知方法。 ・ ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨方法。 ・ ストレスチェック結果、集団ごとの集計・分析結果及び面接指導結果の共有方法及び共有範囲。・ ストレスチェック結果を事業者へ提供するに当たっての本人の同意の取得方法。 ・ 本人の同意を取得した上で実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲。 ・ 集団ごとの集計・分析結果の活用方法。 ⑧ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法 ・ 情報の開示等の手続き。 ・ 情報の開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法。 ⑨ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法 ・ 苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い。 なお、苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合は、当該外部機関において労働者からの苦情又は相談に対し適切に対応することができるよう、当該窓口のスタッフが、企業内の産業保健スタッフと連携を図ることができる体制を整備しておくことが望ましい。 ⑩ 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること ・ 労働者にストレスチェックを受検する義務はないが、ストレスチェック制度を効果的なものとするためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいという制度の趣旨を事業場内で周知する方法。 ⑪ 労働者に対する不利益な取扱いの防止 ・ ストレスチェック制度に係る労働者に対する不利益な取扱いとして禁止される行為を事業場内で周知する方法。▼(ストレスチェック指針より抜粋) |
<解説>
衛生委員会等における調査審議の意義
○ 新たにストレスチェックを導入する場合、ならびに従来からストレスチェックを独自に実施している場合においても、今般法制化されたストレスチェック制度の実施に備えて、法令で定めた一定の要件を満たしているかどうか確認することが必要です。本人の同意など個人情報の取扱いや不利益取扱いの有無等について検討し、円滑にストレスチェック制度が実施できるよう準備を進めなければなりません。問題があれば事前に検討し改善しておく必要があります。
○ 心の健康に関する情報は機微な情報であることに留意し、実施方法から記録の保存に至るまでストレスチェック制度における労働者の個人情報が適切に保護されるような体制の構築が必要です。ストレスチェックに関与する産業保健スタッフならびに事務職についても個人情報保護等についての教育啓発を怠ってはいけません。どのような方法で教育啓発するのかも検討しておく必要があります。
ストレスチェックの受検の有無、ならびに対象者が同意した場合に事業者に提供される結果内容、高ストレスと判定された場合の面接指導の申し出等に対して不利益な取扱いが発生しないよう審議しておくことが重要です。
衛生委員会等において調査審議すべき事項
○ ストレスチェック制度導入についての労働者への周知が求められます。ストレスチェックがどのような形で実施されるのか、またどのような結果が通知されるのか等についても事前に十分に教育啓発し、一人でも多くの労働者が安心して受検できるよう周知を図らなければなりません。なお、ストレスチェックは、事業者に課せられた義務ですが、労働者において受検は強制ではないこと、ただしなるべく全ての労働者に受けていただくことが望ましいことを周知することが重要です。派遣労働者においては、派遣元ならびに派遣先においてストレスチェックの位置付けについて明確にしておくことが望ましいといえます。
○ ストレスチェックの実施方法については、質問紙による調査票、もしくはICT1を活用するのかを選択(併用も可)し、その実施方法についての具体的な注意点を整理しておく必要があります。また、集団ごとの分析を実施して職場環境の改善に活用するための方法等についても予め定めておくことが望ましいといえます。
○ ストレスチェック結果をどのような方法で本人に通知するのかについて、個人情報の保護の視点を考慮して定めておくことが必要です。面接指導の対象となったことが対象者の不利益にならないよう、その結果通知の方法には工夫が必要です。
○ 個人のストレスチェック結果の事業者への提供に当たっての、同意の取得方法としては、対象となる労働者全員に対して個別に同意を取得する必要があり、衛生委員会等での合議による包括的な同意は認められません。また、個人のストレスチェック結果は事業者に提供しない取扱いとすることも可能です。
○ ストレスチェックに関して個人情報の漏えいや不利益取扱いが発生した場合には、再発を防止するためにその対策等を調査審議しなければなりません。
その他
○ 労使の定期的な調査審議の場である衛生委員会を活用して、各事業場においてストレスチェック制度が適切に実施されていることを確認、点検し、より適切で有効な仕組みとなるようPDCAサイクル2により評価、改善を行うことが重要です。
○ なお、衛生委員会の議事については、規則第23条に基づき、開催の都度議事の概要を労働者に周知し、重要なものに係る記録を3年間保存することとされているので、留意しましょう。
(ストレスチェックについて資料ご希望の方は、ユニオン本部にご連絡ください)
17学究社第1回団交要求書(最終版)、及び団交での回答・評価(概略)
当初3/25に送付した団交要求が実現したのは5/17で、ベースアップ要求を含んだ要求書の提出が例年より遅くなったとは言え、会社は3/25日付の団交要求書にイチャモンをつけ再度団交要求書の提出を求めてきた。その間に会社は今年度のベースアップをしない旨の全校メールを流した。その間の経緯について抗議した部分が下記17第1回団交要求書(改)の「前書き、1」の部分である。
17第1回団交要求書(改) 2017.4.28 前書き、「1」は略 2 災害時の出勤に関する問題 団交事項の範囲を含め組合と見解が異なっている。それらについて団交の席で議論したい。 3 講習時の時間割と時間外処理について 回答書では「講習時の時間外労働については、時間割を確認し、上長が承認した場合、時 間外勤務手当の支払いを行っている。」としているが、このままでは内容に不明点があるの で団交の場で質問したい。 |
2について
回答書では「災害時の出勤の問題は義務的団交事項に当たらない。時間外労働(及び出勤に備えたホテルの宿泊費)は社内ルールに従って処理している」としていたが、団交では時間外等発生した場合は請求があれば支払う、と明確に回答。この件は従来から問題としては存在していたが、顕在化し、組合が取り上げたのは昨年の夏期講習時の大雨警報発令に伴った対応を巡る件であった。これについてはこれまでの団交でも取り上げてきたが会社はこれまで団交議題にすることを拒んできた。今回の団交において「時間外等発生した場合は請求があれば支払う」と明確な回答を引き出した。
3について
回答書では「講習時の時間外労働については、時間割を確認し、上長が承認した場合、時間外勤務手当の支払いを行っている。」という部分は必ずしも明確ではなく過去においてはサービス残業になっていた事例もあった。しかし今回の団交では「時間割が確定した段階で、本人の手続きは必要なく自動的に支払う」とこれもまた明確に回答した。
2や3の項目は長きにわたる組合の追究もあり、徐々に改善されてきた部分もあるが、今回はっきりと処理方法を明確に回答(支払うこと)したことは大きな前進である。
17学究社第2回団交要求書、及び団交での回答・評価(概略)
17第2回団交要求書 2017.6.16 ☆ 夏期賞与を以下のように要求する。 ・夏期賞与については 2.8ヶ月 を要求する。 昨年はベースアップを実現した上で、会社は平均2.3ヶ月を回答している。 今年は平成29年3月期決算(2017.5.12付けH29年3月期決算短信)に見られるように好 調だった 決算数字および今年度はベースアップを見送ったことを踏まえ、従業員には夏期 賞与で昨年度回答 を上回るものを還元すべきであると考える。 |
1 夏期賞与要求に対する会社側回答
会社は組合要求2.8ヶ月に対して2.3ヶ月(=昨年と同じ)を回答してきた。組合は昨年度はベースアップを実現した上での回答であり、今年度は①ベースアップを実施していないこと。②決算が好調であること などから回答を不服として回答を留保。再回答を求めたが結果は残念ながら変わらず。
会社は①決算が好調だったのは前期の不調を後半頑張ってやっと達成した数字である。(意味がよく分からない)
②今年の今まで(6月末)は特にマイスクールで昨年度より現状300~400名少ないなどの数字を上げて回答の根拠としてきた。
組合は①賞与は業績に対する評価が基本であり、昨年の好調な業績に対する評価が基本であること。昨年度は過去最高とも言える数字、グループで売り上げ99.2億(対前年+2.2%)だが、経常利益15.1億(+6.7%)で学究社単体ではそれぞれ89.7億、14,8億でグループの売り上げで約9割、利益の約9,8割を占めている。これを評価すべきであること。今年度の不調は考慮すべきことではあるとしてもあくまで今まで(4~6月期)のことであること、などをあげ会社の回答(評価)に反論した。
組合はまた個別指導の目標(4月の新社長の文書によれば売り上げ+153.7%、利益+201.3%の目標値)が高すぎるのではないかと指摘。会社も苦戦していることは認めた。
4月から大久保社長体制(河端氏は会長へ)になったわけだが、持ち株の変遷を見てみると、2012年 KSKK(親会社)の持ち株230万株(39.93%)、河端氏
182万株(31.5%)が2015年はKSKKは変化なし、河端氏 82万株(15.3%)、2017年 KSKK 358万株(33.45%)、河端氏
32万株(2.99%)、2017年はKSKKは40万株の株の割り当てを受け(2017年5.16会社側資料)、比率を高めている。河端氏の直接支配の形は弱めつつ、親会社(実質株主は河端氏のみ)を通しての支配の構造は強化されている。周到な準備の上での新体制であることが窺える。
以下については団交の議題としては要求していなかったが、団交の場において確認したものである。
2 X組合員の雇用延長問題
X組合員は定年再雇用の規程に従い60歳以降も雇用を延長してきた。しかし7月末に65歳の誕生日を迎えるにあたり定年再雇用規程上では満期を迎える。本人は時間講師としての雇用の延長を希望しており、それに沿うよう雇用の延長を求めた。会社は現場の校長の要請・支持もあることから認める方向で手続きを進めることを表明した。
現在年金の支給開始時期が65歳まで遅らされていく過程にあること。またそれすらさらに70歳支給へと伸ばされるという議論もある中、働きたい(あるいは働かなくてはならない)高齢者は確実に増えている。特に今は団塊の世代が65歳の時期を超えようとしている時期にも当たり、人口減少化に向かう日本は少子化対策(これには待機児童問題や女性の働き方の問題等も含む)が求められていると同時に人的資源の有効活用の観点でも高齢者の働く場所の確保や待遇の改善が求められている。
3 今後の課題
経営戦略を考えるのは組合の仕事ではないが、取りあえず以下の2点については留意する必要があるだろう。
(1) 大学入試改革を頂点とする学習指導要領の改定の影響、及び都内高校の学費の無償化の方向(小池都政)が及ぼす入試への影響。
(2) 「個別指導を中心に急激にblack企業化する塾業界」(yahooニュース等による)の実態。これは前述したマイスクールの苦戦にも関連している。大久保社長の4月の文書にある「個別 売り上げ 15億円(前期比153.7%)、営業利益 3億円(前期比201.3%)」なる数字を挙げれば達成する、というほど単純ではない。